前回(2026年8月12日)、当サイトは募集中334制度を全数判定して「jGrantsだけで探すと、補助金の56.6%に出会えない」という結果を公開しました。
あれから7日。母数は393制度(+17.7%)になりました。今回はその続きです。5回分の測定が揃ったので、時系列で見ます。
見えてきたのは、思っていたより単純で、思っていたより厄介な事実でした。jGrantsに載っている制度の数は、5週間ほとんど動いていません。
結果①:jGrants経由は149 → 145件。母数だけが2.4倍になった
母数が増えても、jGrants経由の実数は動かない
全数判定の母数 161件 → 393件(5週間・5回の測定)
第1回 7月12日 161件
jGrants経由 149件・92.5%/それ以外 12件・7.5%
第2回 7月28日 206件
jGrants経由 145件・70.4%/それ以外 61件・29.6%
第3回 8月7日 286件
jGrants経由 142件・49.7%/それ以外 144件・50.3%
第4回 8月12日 334件
jGrants経由 145件・43.4%/それ以外 189件・56.6%
第5回 8月19日 393件
jGrants経由 145件・36.9%/それ以外 248件・63.1%
出典: 「ひとり社長の補助金」調べ(判定データベースの全数集計・5時点)
jGrants経由の実数は 149 → 145 → 142 → 145 → 145件。5週間で誤差の範囲しか動いていません。一方、当サイトの母数は161→393件と2.4倍になりました。
増えた232件は、すべてjGrantsの外から来ています。「jGrantsだけで探すと出会えない」割合は、7.5% → 29.6% → 50.3% → 56.6% → 63.1% と一本調子で広がりました。
誤解のないように書いておくと、これはjGrantsが劣化しているという話ではありません。jGrantsは国の電子申請システムで、そこを使う公募を載せる場所です。そこに載っていないものが日本にどれだけあるかを、jGrantsは知らせる立場にありません。増えているのはこちらの収集網であって、日本の補助金の総数ではない。
ただ、探す側にとっての意味は同じです。国の公式データベースを完璧に使いこなしても、いま当サイトが把握している制度の63.1%には届きません。
結果②:3本目の経路が生まれた — 「国の独自ポータル完結型」
今回のレポートには、これまでに無かった行があります。
| 収集経路 | 件数 | 全国/地域限定 | 補助上限の中央値 |
|---|---|---|---|
| jGrants経由 | 145件 | 72/73件 | 750万円 |
| 自治体サイト直接 | 240件 | 0/240件 | 100万円 |
| 国の独自ポータル | 8件 | 8/0件 | 350万円 |
3本目の8件が、この1週間で新しく入ったものです。小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)、省力化投資補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金——名前を聞いたことがある国の制度が並びます。
なぜ今まで無かったのか。これらはjGrantsに載らないからです。
- 小規模事業者持続化補助金<創業型>第4回は、公募要領が5月に公開済みなのに、jGrantsには受付が始まるまで載りません
- デジタル化・AI導入補助金は、jGrantsに一度も載ったことがありません。独自ポータル(it-shien.smrj.go.jp)で完結します
構造としてはこうです。申請者が多い制度ほど、専用の事務局とポータルを構える。すると国の電子申請システムを使わなくなり、国の公式データベースから消える。有名な制度ほど見つけにくいという、逆向きの相関が働いています。
実際これは当サイトの穴でもありました。日本でもっとも検索される補助金(小規模事業者持続化補助金)が当サイトに1件も無いことに、利用者から指摘されるまで気づけていません。制度が丸ごと無いことを検出する仕組みが無かったからです(いまは主要制度の台帳を毎日DBと突き合わせています)。
判定の全体像も出しておきます。393制度のうち、無条件でひとり社長OKと確認できたのは32件(8.1%)、条件つきが292件(74.3%)、対象外が69件(17.6%)。条件つきのうち補助上限1億円以上の大型が31件、調査・委託の公募が4件。これらを除いた「現実的にひとり社長向き」は291件(74.0%)でした。地域限定は313件(79.6%)です。
結果③:無条件で出せる32件のうち、全国から出せるのは1件だけ
無条件で申請できる「ひとり社長OK」32件を、収集経路で割ります。
| 収集経路 | OK件数 | うち地域限定 | 補助上限の中央値 |
|---|---|---|---|
| 自治体サイト直接 | 24件(75%) | 24件 | 100万円 |
| jGrants経由 | 8件(25%) | 7件 | 85万円 |
| 国の独自ポータル | 0件(0%) | — | — |
32件中31件(96.9%)が地域限定です。裏を返すと、全国どこからでも無条件で出せる制度は、393件の中に1件しかありません(前回334件のときも1件でした。母数が増えても増えない数字です)。
そしてもうひとつ。結果②で挙げた「有名な国の制度」8件は、無条件OKが0件です。内訳は条件つき7件・対象外1件でした。対象外の1件は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で、公募要領に「応募申請時点で従業員数が0名の事業者」は対象外と明記されています。残る7件は従業員0人でも申請できますが、賃上げ要件・登録ベンダー経由・GビズIDプライムなど、必ず何かの条件が挟まります。
無条件OKの比率そのものは上がり続けています。5.0%(7/12)→ 5.3%(7/28)→ 5.6%(8/7)→ 6.6%(8/12)→ 8.1%(今回)。自治体制度が増えるほどOK率が上がる、という第4回の観察がそのまま続いています。
ここから言えることは、ひとり社長にとってかなり実務的です。
名前を知っている制度は「全国から出せるが、条件が付く」。名前を知らない制度は「条件が無いが、自分の地域にしかない」。
この結果から言える、探し方の修正点
過去4回の結論に、今回の2点を足します。
- 国の公式ポータルを見終えても、6割は残っている。 jGrantsは「そこを使う公募の一覧」であって、日本の補助金の目録ではありません
- 有名な制度は、制度名で公式サイトを直接引く。 持続化補助金・デジタル化AI導入補助金などは独自ポータル完結です。横断検索では出てきません(国の主要補助金14制度に一次ソースをまとめました)
- 無条件で出せるものを探すなら、まず自分の都道府県(例:東京都/大阪府/福岡県)。32件中31件がそこにあります
- 市区町村レベルまで降りる。 自治体直接収集240件の多くは市区町村の独自制度です
- 自治体の制度は告知が静かで、募集期間が短い。 一覧で待っていても流れてきません。新着通知か3つの質問の診断で拾うのが現実的です
調査の概要
- 時点: 2026年8月19日(前回は2026年8月12日、前々回は2026年8月7日)
- 母数: 当サイトが収集・判定し公開している募集中の補助金・助成金393件。日本のすべての補助金を網羅するものではありません
- 収集経路の定義: 「jGrants経由」は国の電子申請システムjGrants(デジタル庁)のAPIから毎日全件収集したもの。「自治体サイト直接」はJ-Net21(中小機構)のRSSを起点に一次ソース(自治体・支援機関の公式サイト)を特定して収集したもの228件と東京都中小企業振興公社12件の計240件。「国の独自ポータル」は事務局が専用サイトで完結させている国の制度8件で、一次ソース(事務局サイト・公募要領PDF)は人が確定させています。同一制度が複数経路で見つかった場合は重複裁定で片方を除外済みです
- 前回との集計上の違い: 第4回まで「jGrants以外」は事実上すべて自治体でしたが、今回から国の独自ポータルが混じるため3分類に分けました。第4回の「自治体サイト直接189件」と今回の「240件」は同じ定義(J-Net21起点+東京都中小企業振興公社)で連続しています
- 63.1%の読み方: この比率は当サイトの収集範囲における構成比です。jGrants側は毎日の全件収集でほぼ網羅、それ以外は拡張途上のため、「jGrantsの外」の実際の比率はこれより大きい可能性が高いと考えています
- 判定方法: AIによる公募要領の読解+機械照合+敵対的な二重判定+人間による監査・裁定。「ひとり社長OK」は制度上・無条件で申請可能と確認できたもののみ
- 中央値の母数: 補助上限額が公表されている制度のみ(jGrants経由119件/自治体直接178件/独自ポータル8件)。「上限額は要領参照」とされる制度は除外
- 再現性: 集計は判定データベースからの機械集計です(手作業の分類はありません)
※本レポートは時点スナップショットです。制度は毎日入れ替わるため、最新の件数・一覧はトップページで毎日自動更新されています。
本調査の引用について
本レポートの数値・グラフは、出典(「ひとり社長の補助金」調べ・本ページへのリンク)を明記のうえ、自由に引用いただけます。メディア・支援機関の方の問い合わせはお問い合わせからどうぞ。
本レポートの更新は日付ではなく、数字が動いたときに行っています。今回は前回(8月12日)から母数+17.7%・無条件OK率+1.6ptの変動を検知して公開しました(発火基準: 母数±15%・地域限定±5pt・無条件OK±1.0pt)。
そのまま使える引用文(コピペ可):
「ひとり社長の補助金」(hitori-hojokin.com)の調査(2026年8月19日時点)によると、同サイトが全数判定する募集中の補助金393制度のうち、国の電子申請システムjGrants経由で収集されたのは145件(36.9%)にとどまり、248件(63.1%)はjGrantsの外にあった。jGrants経由の実数は5週間で149→145件とほぼ横ばいで、同期間に母数は161→393件と2.4倍に増えている。従業員0人のひとり社長が無条件で申請できるのは32制度(8.1%)で、うち31制度(96.9%)が地域限定。全国から無条件で申請できる制度は1件だった。