「補助金でパソコンが買える」——そう書いた記事はたくさんあります。ですが実際に申請しようとして、公募要領の対象外経費の欄に「パソコン」を見つけて手が止まった人も多いはずです。

どちらが本当なのか。当サイトが判定している募集中556制度を全数で数えました。

結果:対象10件に対して、対象外39件

制度数
対象経費にパソコン等を明記している 10件
明示的に対象外としている 39件

対象外のほうが約4倍多い。「パソコンが買える」を前提に制度を探すと、かなりの確率で外します。

ただ、この数字だけで「パソコンは補助金の対象外」と結論するのは早いです。理由の中身を読むと、話が変わります。

対象外の理由は、ほぼ全部「パソコンだから」ではなかった

対象外の記述42件の文言を分類しました。

理由に含まれる語 件数
汎用性(汎用性が高い・汎用品) 30件
目的外使用(目的外使用になり得る) 15件

つまり制度が嫌っているのはパソコンという物ではなく、「事業以外にも使えてしまうこと」です。原文を見るとはっきりします。

汎用性が高く、使用目的が本補助事業の遂行に必要なものと特定できない経費(例:パソコン、タブレット、デジタルカメラ等)

汎用性があり、目的外使用になり得るもの(テレビ、パソコン、文書作成・表計算ソフト等)の購入に要する経費

パソコンは「例」として挙がっているだけで、判断基準は「事業専用と特定できるか」のほうにあります。

決定的なのは、10件が「専用なら対象」と書いていること

対象外の欄にパソコンを挙げている39件のうち、10件は但し書きを付けています。

パソコン、プリンタ等汎用性の高いもの(研究開発に係るシステム機器等と一体的、専用で使用される等、汎用性のない場合は対象)

汎用性が高く、補助事業に限定して使用されることが明確に特定できない物のリース・レンタル契約、賃貸借契約(パソコン、カメラ…)

「対象外」と書いてある欄に、条件を満たせば対象になると書いてあるわけです。これは対象外経費の一覧だけを眺めていると読み飛ばします。

そして面白いことに、対象側からも同じ基準が出てきます。 対象経費にパソコンを明記している鹿児島県の制度は、こう書いています。

パソコン、タブレット、プリンター及びそれらの複合機器(汎用性の高い機器は事業に専用で使用することが明確に認められる場合に限る)

対象の欄と対象外の欄、正反対の場所に同じ判断基準が書かれている。ここがこの調査でいちばんはっきりしたことです。

境目は「パソコンかどうか」ではなく「事業専用と特定できるか」。

対象経費にパソコンを明記している制度

10件のうち、パソコン・タブレットの購入そのものが読み取れるのは次の8件です。

制度 地域 補助上限
令和8年度愛媛県バス事業者省エネ対策等緊急支援事業 愛媛県 2,000万円
介護テクノロジー導入支援事業費補助金 北海道 1,000万円
ウェルカムくにさき!サテライトオフィス等誘致促進補助金 大分県(国東市) 550万円
デジタル化・AI導入補助金2026<インボイス枠・インボイス対応類型> 全国 350万円
「観光地づくり加速化補助金」 北海道 200万円
令和8年度神奈川県小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金 神奈川県 50万円
ICT化で業務を効率化しませんか!?〜令和8年度中小企業等生産性向上支援事業〜 鹿児島県 50万円
柳津町小規模事業者後継者支援事業補助金 福島県 30万円

残る2件は「タブレット型給油許可システム」「採用活動のかかり増し経費」という記述で、汎用パソコンの購入とは別物でした(機械的な文字列一致で拾ったものです。数字をそのまま信じず、内訳まで見てください)。

初版(2026年8月12日・母数333制度)からの変化がひとつあります。当時この表は地域限定3件・上限30〜50万円だけで、「身の丈に合うのは自治体側」という結論でした。いまは全国の制度が1件入っています——デジタル化・AI導入補助金2026の<インボイス枠・インボイス対応類型>が、ハードウェア関連費としてPC・タブレットを明記しています(当サイトへの掲載は2026年8月17日)。

ただし上位4件は用途が限定されます。愛媛県のバス事業者向けは省エネ対策に必要不可欠な汎用品という位置づけ、介護テクノロジーは介護ソフトの導入に付帯する端末費、国東市の補助金は市外に本社がある法人が市内にサテライトオフィスを新設するときの備品費(個人事業主は対象外)、インボイス対応類型はレジ・券売機等が主眼です。「パソコンを買うための枠」ではありません。金額の大きい制度ほど用途が絞られ、汎用的に使える制度ほど上限が小さい——という構図自体は変わっていません。

前回(2026年9月2日・母数480)から、母数は556件(+15.8%)に増えましたが、対象は9→10件、対象外は40→39件、但し書きつきは10件のままでした。増えた1件は上の国東市の補助金です。その前の回(392→480件)でも対象外は43→40件と減っており、増える制度の多くは自治体の小規模制度と国のエネルギー・委託系で、パソコンに触れていません。割合ではなく件数で見ている指標は、母数が増えても動かない・下がることがあります。

この構図は当サイトの他の調査とも一致します。金額の中央値は地域限定200万円に対し全国4,950万円、手間が軽いのは地域限定に集中、そして「無条件で出せる」制度の68%は自治体。

募集中の制度はパソコン・タブレットに使える補助金で毎日更新しています(対象・対象外の両方を掲載しています)。

では、どう動けばいいか

制度の側が見ているのが「専用と特定できるか」である以上、やることは3つです。

  1. 「パソコンを買うための補助金」を探さない。 そういう制度はほぼ存在しません。探すのは「やりたいことに使える制度」で、パソコンはその手段として計上します
  2. 公募要領の対象外経費の欄を、括弧の中まで読む。 「対象外」と書いてある行に「ただし専用なら」が入っていることが10件ありました。公募要領の読み方に、どこを何の順で読むかをまとめています
  3. 専用であることを説明できる形にする。 用途・設置場所・利用者が事業に限定されると書ける状態か。ここは制度ごとに事務局の判断が入る領域なので、迷ったら申請前に事務局へ確認するのが確実です

なお、補助金は後払いです。パソコンの代金はいったん全額を自分で払います。対象になったとしても、手元資金は先に出ていく点は変えられません。

調査の概要

  • 時点: 2026年9月17日(初版 2026年8月12日・母数333制度、第2版 8月19日・392制度、第3版 9月2日・480制度を全数集計し直したもの)。母数は当サイトが収集・判定し公開している募集中556制度
  • 判定方法: 公募要領をAIで読み取り、対象経費・対象外経費として列挙されている項目を構造化して保存したもの。そこから「パソコン」「タブレット」「PC」の語を機械的に検索しました
  • 数え方の限界: 要領に書かれていない制度は、どちらにも数えていません(対象外経費の記載がある制度は556件中320件)。「対象外に書いていない=対象」ではありません
  • 文字列一致の限界: 上記のとおり、対象10件のうち2件は文脈上パソコン購入とは別物でした(「タブレット型給油許可システム」「採用活動のかかり増し経費」)。なお照合語に半角「PC」を入れると特許のPCT出願が大量に混じるため、語彙は「パソコン/PC/タブレット」に限定しています。件数はそのまま鵜呑みにせず、内訳を確認してください
  • 本記事は個別の可否を保証しません。 申請の際は必ず各制度の公募要領と事務局の一次情報をご確認ください

よくある質問

個人事業主でもパソコン購入に補助金は使えますか?

「パソコンを買うための補助金」はほぼ存在しませんが、事業の目的に使える制度の中で、パソコンを対象経費として計上できる場合があります。募集中556制度のうち、対象経費にパソコン等を明記していたのは10件でした。多くの制度は「汎用性が高い」として対象外に挙げています。

なぜパソコンは補助金の対象外にされることが多いのですか?

理由のほとんどは「パソコンだから」ではなく「汎用性が高く、事業以外にも使えてしまうから」です。対象外の記述42件のうち30件が汎用性に、15件が目的外使用に言及していました。私物としても使える物に公金を充てられない、という考え方です。

対象外と書いてあっても対象になることはありますか?

あります。対象外の欄にパソコンを挙げている39件のうち10件は「事業に専用で使用されると特定できる場合は対象」という但し書きを付けていました。逆に、対象経費に明記している制度も「専用で使用することが明確に認められる場合に限る」と条件を付けています。境目は「パソコンかどうか」ではなく「事業専用と特定できるか」です。

IT導入補助金ならパソコンを買えますか?

制度の内容は年度ごとに変わるため、必ず最新の公募要領でご確認ください。一般論として、国のIT導入系の補助金はソフトウェア・ITツールの導入が主眼で、ハードウェア単体の購入は枠や条件が限定されることが多い区分です。当サイトではパソコン・タブレットに使える補助金で、募集中の制度を対象・対象外の両方で毎日更新しています。

中古のパソコンは対象になりますか?

制度によります。中古品を明確に対象外としている制度がある一方、金額の下限(単価5千円未満・税抜10万円未満など)を設けている制度もありました。要領の対象外経費の欄に「中古品」「単価」の記載があるかを確認してください。


本記事は一般的な情報提供であり、個別の申請可否の判断ではありません。対象経費の範囲は制度ごとに異なり、同じ制度でも年度・枠によって変わります。必ず各制度の公募要領・事務局の一次情報をご確認ください。当サイトは申請書類の作成代行は行いません。