補助金でいちばん痛い誤算は、不採択ではありません。採択されたのに、使った経費が「対象外」で戻ってこないことです。

補助金は「採択されたら好きに使える」お金ではありません。何に使えるかは、公募要領の「補助対象経費」の章で1件ずつ決められています。しかもこの範囲は制度ごとに違います。

当サイトは公募要領をAIで解析して掲載しています。そのデータから、いま募集中で、ひとり社長が申請しうる441制度のうち、対象外経費を明記していた277制度を対象に、「何が対象外とされているか」を集計しました。

対象外になりやすい経費(募集中277制度の集計)

対象外になりやすい経費 明記していた制度数 割合
消費税・仕入税額控除分 129件 47%
振込手数料・金融費用 72件 26%
汎用パソコン・タブレット等 66件 24%
建物の取得・不動産 64件 23%
公租公課(税金・罰金) 58件 21%
人件費(何らかの制限) 54件 19%
リース・レンタル料 51件 18%
中古品 49件 18%
飲食・接待費 38件 14%
土地の取得 38件 14%

(2026年9月9日時点。当サイト掲載の募集中制度から機械集計。同じ趣旨でも制度ごとに表現が違うため、キーワードでの分類です。実際の可否は必ず各制度の公募要領をご確認ください)

掲載制度が増えるたびに全数を集計し直しています(初版 2026年7月19日・母数124制度 → 8月19日・209制度 → 8月27日・242制度 → 今回 277制度)。分類語は8月19日版から変えていないので、下の増減はそのまま母集団の変化を表します。

ひとつ、割合の動きに注意書きが要ります。前回(8月27日)は消費税の件数がほぼ動いていないのに(113件→114件)、割合が54%→47%に下がりました。母集団の顔ぶれが変わったためで、制度側のルールが変わったわけではありません。

今回はその下降が続きませんでした。母数が376→441制度(+17.3%)と増えても、消費税の割合は47%のまま動いていません(114件→129件)。1回の変化だけで傾向を読むと外れる、という例です。

順位はいくらか入れ替わりました。中古品が6位から8位へ、飲食・接待費が10位から9位へ。どちらも件数自体は増えており(中古品 46→49件、飲食 28→38件)、動いたのは増え方の差です。割合だけを他の記事と比べるときは、母数が何かを必ず確かめてください。

※初版(7月19日)だけは分類語が違います。当時は「手数料」を広く拾っており、仲介手数料や特許の出願手数料まで「振込手数料」に混ざっていました。8月19日版から振込・代金引換・為替に限定しています(39%→28%)。初版の数字とは直接比較できません。

ひとり社長がとくに誤解しやすい3つ

1. 自分の人件費は、基本的に出ない

これがいちばん大きい誤解です。人件費に制限をかけている制度は54件(19%)ありましたが、その中身を見ると、ひとり社長には厳しい書き方が並びます。

実際に公募要領にあった表現です。

  • 「事業に係る自社の人件費」
  • 「法人の代表者及び役員の人件費、組合の役員及び組合員の人件費、個人事業主本人及び三親等以内の親族の人件費」
  • 「代表者や役員の報酬、人件費」

つまり、ひとり社長が自分で手を動かした分は、多くの制度で補助の対象になりません。従業員がいる会社なら「担当者の人件費」を計上できる場面でも、ひとり社長には計上できる人件費がそもそも無い、という構図になりがちです。

ここから導かれる現実的な戦略は、補助金は「自分の時間」ではなく「外に払うお金」に対して使うということです。外注費・設備費・システム導入費など、実際に他者へ支払った経費が中心になります。「自分でやれば安く済む」は、補助金の文脈では逆に補助額が小さくなる方向に働きます。

2. 汎用パソコン・タブレットは基本的に買えない

66件(24%)が汎用品を除外していました。要領の表現はたとえばこうです。

  • 「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費(例:事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフトウェア・タブレット端末)」
  • 「汎用性のあるパソコンやタブレット等の取得(業務目的のみに使用する場合を除く)」

「補助金でノートPCを買い替えよう」は、多くの制度で通りません。理由は、私用に転用できてしまうからです。逆に言えば、その事業にしか使えない専用の機械・ソフト・設備であれば対象になりやすい、ということでもあります。

3. 消費税は補助の対象外(=計算は税抜)

もっとも多かったのが消費税(129件・47%)です。補助金の世界では、消費税は原則として補助対象になりません。

これは金額計算に直結します。たとえば「補助率1/2・110万円(税込)の設備」を導入した場合、補助の計算対象は税抜100万円なので、戻るのは55万円ではなく50万円です。見積書を見て「半分戻る」と考えていると、消費税10万円ぶんの誤差が出ます。

見落としやすい細かい罠

  • 振込手数料(72件・26%) — 経費そのものは対象でも、支払時の手数料は対象外というパターン。金額は小さいですが、実績報告で指摘されます
  • 中古品(49件・18%) — 新品限定の制度が多い。コストを抑えようと中古で揃えると、その分が丸ごと対象外になることがあります
  • リース・レンタル(51件・18%) — 「購入」を前提にした制度では、リースは対象外になりがちです。リース契約は補助事業期間を超えて続くため、扱いが難しいという事情があります

どこを見れば分かるか

対象経費は、公募要領の中で「補助対象経費」「対象となる経費」といった章にまとまっています。ここには通常、対象になるものと対象にならないものが両方書かれています。読む順番のコツは公募要領の読み方にまとめました。

申請前に確認しておきたいのは、次の3点です。

  1. やろうとしている支出が、対象経費の区分に入っているか(入っていなければ、その事業では補助金は使えません)
  2. 税抜で計算しているか(補助額の見積もりがずれます)
  3. いつからの経費が対象か(多くの制度で、交付決定より前に発注・契約した経費は対象外です)

対象外経費は「全額自腹」になる

最後に、資金繰りの話です。補助金は多くの場合後払い(精算払い)で、いったん全額を自分で立て替えます。そのうえで、対象外と判断された経費は、後から補助されずに自分の負担として残ります。

つまり対象外経費の見落としは、「もらえる額が減る」だけでなく「立て替えたまま返ってこない」という二重の打撃になります。事業計画を立てる段階で、総額のうち補助対象はいくらか/自己負担はいくらかを分けて把握しておくのが安全です。各制度のページには、補助率から自己負担を試算できる簡易計算を用意しています。


この記事について:数値は当サイトが公募要領をAIで解析したデータの集計です(2026年9月9日時点・募集中277制度)。制度ごとに表現や範囲は異なり、集計はキーワードによる分類のため、個別の可否を保証するものではありません。申請の際は必ず各制度の公募要領・事務局の一次情報をご確認ください。当サイトは申請書類の作成代行は行いません。