「補助金を使いたい」と思って名前を調べると、持続化、ものづくり、IT導入、省力化、事業承継…と大きな制度名が並びます。ところが従業員0人のひとり社長が実際に申請できるものは、その中の一部です。
しかも「使えない」理由は制度ごとに違います。要領に「従業員数が0名の事業者」は補助対象外と書いてあるものもあれば、賃上げ要件の計算が0人だと成り立たないものもあり、逆に「従業員を雇用していない法人は役員と読み替える」とわざわざ書いてあるものもあります。
この記事は、国の主要14制度の公募要領を読んで、その線を引いたものです。2026年8月17日時点の一次ソースに基づいています。
訂正(2026年9月29日): 初版では「事業再構築補助金(共同申請)」を、従業員0人でもそのまま使える制度に数えていました。誤りです。事業再構築補助金の新規の応募受付は2025年3月に終わっており、jGrantsに残っているページはリース会社向けの届出フォームでした。あわせて、ものづくり補助金の23次、省力化投資補助金(一般型)の第8回、事業承継・M&A補助金の16次、デジタル化・AI導入補助金の締切を、2026年9月29日時点の一次ソースで更新しています。
更新(2026年10月3日): 事業承継・M&A補助金の16次公募の受付開始(10月2日)を反映し、区分を「次回公募待ち」から「承継・M&Aのときに使う」に移しました。業務改善助成金の締切(労働局ごとに9月30日〜11月30日)と掲載状況も更新しています。
結論(先に)
| 区分 | 制度数 | 内容 |
|---|---|---|
| そのまま使える | 3 | 従業員0人でも制度上申請できる |
| 従業員が1人以上必要 | 6 | 0人には無関係。1〜5人なら効く |
| 大型で実態が遠い | 2 | 上限5億円級・共同研究体が前提 |
| 公募が終了 | 2 | 新規の応募受付が終わった |
| 承継・M&Aのときに使う | 1 | 従業員の有無は問わないが、承継かM&Aがあることが前提 |
「従業員が1人以上必要」の6制度のうち4つは厚生労働省の雇用関係助成金で、そもそも従業員がいないと制度が成立しません。残る2つ(ものづくり補助金と省力化投資補助金の一般型)は要領に従業員数の要件があります。
そのまま使える3制度
小規模事業者持続化補助金
商工会・商工会議所が窓口の、いちばん名前が知られている制度です。販路開拓や業務効率化の費用が対象で、補助上限は250万円(枠と特例により変動)。
2026年9月17日時点で動いているのは4つの枠です(9月16日に熊本地震の災害支援枠が加わりました)。
| 枠 | 上限 | 受付 | 締切 |
|---|---|---|---|
| <一般型・通常枠>第20回 | 250万円 | 2026年11月5日開始 | 2026年12月15日 |
| <創業型>第4回 | 250万円 | 2026年11月5日開始 | 2026年12月15日 |
| <一般型 災害支援枠(令和6年能登半島地震等)>10次 | 200万円 | 受付中 | 2026年10月16日 |
| <一般型 災害支援枠(令和8年熊本地震)>1次 | 200万円 | 受付中(9月16日開始) | 2026年10月16日 |
災害支援枠は被災地域で被害を受けた事業者だけが対象です。熊本地震の枠は、熊本県内に事業所があり被害を公的証明等で確認できる小規模事業者が対象で、上限は直接被害200万円・間接被害100万円です(商工会地区と商工会議所地区で申請ページが分かれています)。
一次ソース: jGrants(商工会地区) / 当サイトの掲載 → 熊本地震 災害支援枠 1次公募【商工会地区】
<創業型>は注意が必要です。 申請要件に「特定創業支援等事業」の証明書があり、取得に原則4回以上・1か月以上かかります。11月5日の受付開始を見てから動くと間に合いません。詳しくは特定創業支援等事業の記事にまとめました。
一次ソース: 商工会議所地区の事務局サイト
デジタル化・AI導入補助金2026(旧 IT導入補助金)
令和7年度補正予算からIT導入補助金が改称された制度です。ソフトウェア・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費が対象で、4つの枠があります。
| 枠 | 上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 450万円 | 1/2以内 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 350万円 | 枠内で区分(PC等10万円・レジ等20万円) |
| インボイス枠(電子取引類型) | 350万円 | 2/3以内 |
| セキュリティ対策推進枠 | 150万円 | 中小 1/2 / 小規模事業者 2/3 |
締切は回ごとに設定されています(1次は2026年8月25日、5次は9月29日)。6次の締切は2026年10月30日17:00で、交付決定は12月10日の予定です(事務局の事業スケジュール・2026年9月30日確認)。
この制度は従業員0人の法人でも申請できることが要領に明文で書かれています。賃上げ目標の算定について、通常枠 公募要領 p.10 にこうあります。
従業員を雇用していない法人は、上記の従業員を役員と読み替え、役員報酬と役員数に応じて算出すること
さらに、要領の「小規模事業者の定義」には「会社役員及び個人事業主は『予め解雇の予告を必要とする者』に該当しないため『常時使用する従業員』には該当しない」とあります。つまりひとり社長は従業員0人=小規模事業者に該当し、セキュリティ対策推進枠の補助率が1/2から2/3に上がります。
賃上げ要件は申請額と過去の受給歴でゲートされています。初回申請で150万円未満なら、賃上げ要件は一つもかかりません(150万円以上、または過去にIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けている場合は必須)。
入口の条件としてGビズIDプライムの取得とIPA「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。GビズIDは取得に日数がかかるので、締切間際に始めると間に合いません。
2027年4月からの飲食料品の消費税率引下げに向けて、この補助金の中にレジの導入・改修向けの別枠(消費税率引き下げ対策)が設けられ、2026年9月15日以降の導入を後から申請できます。詳しくは消費税減税のレジ対応に使える補助金にまとめました。
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
あらかじめ登録された省力化製品のカタログから選んで導入する形の制度です。随時公募で受付中(この記事の時点で締切は2027年3月31日)。
上限は従業員数で変わります。5人以下は500万円、大幅な賃上げを行う場合は750万円です(6〜20人は750万/1,000万円、21人以上は1,000万/1,500万円)。制度としての上限は1,500万円ですが、ひとり社長が見るべき数字は500〜750万円のほうです。
要領上、従業員0人の法人も申請できます。ただし2回目以降の交付申請では、申請時点で常勤従業員がいないと最低賃金の賃上げ要件を満たせないため申請できません。またカタログ登録製品の導入と販売事業者との共同申請が前提です。
一次ソース: カタログ注文型の事務局サイト
従業員が1人以上必要な6制度
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
従業員0人では申請できません。 要領に「常時使用する従業員の数が1人以上であることが要件であり、従業員数が0人の場合は目標値の設定ができないため申請できない」とあります。
直近の23次は2026年5月8日に締め切られ、8月7日に採択結果が公表されました。24次の公募は2026年9月29日時点で発表されていません(事務局サイトに制度終了の記載はなく、通年公募の表記のままです)。従業員が1人以上いるなら、次の回を待つ価値のある制度です。
jGrantsの23次のページは受付期間が2028年3月31日までと表示されていますが、これは採択後の交付申請などの手続き用で、新しい応募は受け付けていません。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
2026年から始まった制度で、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つがあります。第1回は申請受付2026年9月30日〜締切2026年10月30日18:00。
こちらも従業員0人は申請できません。公募要領 1-4-2「補助対象外となる事業者」に明記されています。
- 応募申請時点で従業員数が0名の事業者 ※ 中小企業等の新規事業への進出を通した企業規模の拡大や賃上げを事業の目的とすることから、従業員が0名の事業者は対象となりません。
従業員1〜5人なら革新的新製品・サービス枠で上限750万円(賃上げ特例適用時850万円)、新事業進出枠なら1〜20人で2,500万円(同3,000万円)です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)
従業員0人では申請できません。 第8回の公募要領に次の記載があり、補助対象外の事業者にも「応募時点において、従業員が0名の事業者」が挙がっています。
応募申請時に従業員数が0名の場合、対象となる給与が存在しないことから本事業には応募できません。
同じ省力化投資補助金でも、上のカタログ注文型(従業員0人の法人も初回は申請できる)とは線が違います。
第8回は2026年9月18日に受付が始まり、締切は2026年10月16日17:00です。補助上限は従業員5人以下で750万円(大幅な賃上げ特例の適用時1,000万円)。
一次ソース: 一般型の事務局サイト / スケジュール / 第8回 公募要領 / 当サイトの掲載 → 省力化投資補助金(一般型)第8回
厚生労働省の雇用関係助成金(4制度)
業務改善助成金(事業場内最低賃金の引上げ+設備投資)、キャリアアップ助成金(有期から無期への転換など)、人材開発支援助成金(従業員の訓練費用)、両立支援等助成金(育休・介護休業の環境整備)は、いずれも従業員がいないと制度が成立しません。
ひとり社長が人を雇い始めたときに、はじめて視野に入る制度群です。
この4制度のうち、業務改善助成金だけが2026年8月31日〜9月1日にjGrantsへ登録されました(2026年10月3日時点で47件。都道府県労働局ごとに別レコードで載っています)。厚生労働省の助成金は都道府県労働局が窓口のため長らくjGrantsの外にありましたが、この制度は例外的に入ってきた形です。
受付の締切は労働局ごとに違います。 jGrants上の締切は2026年9月30日から11月30日までばらついており、10月2日までに22件が締切を迎えました。お住まいの都道府県の締切は、jGrantsか労働局で確認してください。当サイトへの掲載は3件(うち募集中は2件)で、残りは公募要領PDFを特定できず判定できていません。
キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金・両立支援等助成金の3制度は、引き続きjGrantsに載らないため当サイトでも扱っていません。厚生労働省のページを直接ご確認ください。
大型で実態が遠い2制度
中小企業成長加速化補助金は売上高100億円を目指す企業の大規模投資向けで、上限5億円。成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)は大学・公設試との共同研究体が前提です。
制度上は中小企業が対象ですが、ひとり社長の実態からは遠いので、当サイトでは一覧の後ろに回しています(隠してはいません)。
公募が終了した2制度
中小企業新事業進出補助金は、事務局サイトに「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。上に挙げた「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が後継です。
事業再構築補助金も、新規の応募受付は第13回公募(2025年3月26日に受付終了)で終わっています。事務局サイトに「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。
jGrantsには「事業再構築補助金(共同申請_リース会社)」のページが受付期間2028年5月7日までとして残っていますが、これは採択済みの事業者についてリース会社が共同申請先を届け出るためのフォームで、新しく応募する窓口ではありません。この記事の初版はこれを「リース会社との共同申請の形が残っている」と読み違え、そのまま使える制度に数えていました(冒頭の訂正を参照)。
一次ソース: 事業再構築補助金の事務局サイト
なお「ものづくり補助金も統合されて終了した」と書いている解説を見かけますが、ものづくり補助金の事務局サイトには終了の記載がありません(通年公募の表記のまま。2026年9月29日確認)。ただし直近の23次は5月8日に締め切られ、24次は未発表です。名称に「ものづくり」を含む新スキームが始まったことと、旧制度が終わったことは別の話です。
事業承継・M&Aのときに使う1制度
事業承継・M&A補助金は、16次公募の申請受付が2026年10月2日に始まりました。締切は2026年11月6日(金)17:00です(公募要領「13.2. 申請受付期間」。申請はJグランツから)。
申請する事業者に従業員がいるかどうかは問われません。ただし日常の経費に使う補助金ではなく、事業承継やM&Aがあるときに使う制度で、枠ごとに前提があります。
| 枠 | 前提(公募要領より) |
|---|---|
| 事業承継促進枠 | 親族内承継や従業員承継等の事業承継を予定していて、後継者が中心となって設備投資等に取り組むこと |
| 専門家活用枠(買い手支援・売り手支援) | M&Aによる事業再編・事業統合を伴うこと。「常時使用する従業員1名以上の引継ぎが行われていない場合は、経営資源引継ぎの要件を満たさないと事務局が判断する可能性がある」と明記 |
| PMI推進枠 | M&A後の統合作業(PMI)に取り組むこと。従業員の引継ぎについて専門家活用枠と同じ注意書きがある |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2020年以降にM&A(事業の譲り渡し)に着手したものの、成約に至らなかった者であること |
ひとり社長に関係しやすいのは、従業員のいる会社や事業を買うときの専門家活用枠(買い手支援類型)です。反対に自分ひとりの事業を売るときは、引き継ぐ従業員がいないため、専門家活用枠では要件を満たさないと判断される可能性があります。
一次ソース: 事務局サイト / 専門家活用枠 16次公募要領 / 事業承継促進枠 16次公募要領 / 廃業・再チャレンジ枠 16次公募要領
この記事の作り方
当サイトは国と自治体の補助金を毎日収集し、AIが公募要領PDFを読んで「従業員0人のひとり社長が申請できるか」を判定しています。この記事の判定はその結果で、根拠になった条文はすべて一次ソースを引用しています。
上の14制度は台帳として管理しており、毎日DBと突き合わせて「載っていない主要制度」を検出しています。この記事を書いた発端も、日本でもっとも検索される補助金(小規模事業者持続化補助金)が当サイトのデータベースに1件も無いことに、利用者の指摘まで気づけなかったことでした。
各制度の詳しい条件・対象経費・必要書類は制度ごとのページで確認できます。トップページの「国の主要制度」から辿れます。
よくある質問
従業員0人でも本当に補助金は使えますか?
使えます。この記事の「そのまま使える3制度」がそれです。ただし制度ごとに理由が違うので、要領の該当箇所を確認してください。デジタル化・AI導入補助金のように「従業員を雇用していない法人は役員と読み替える」と明文で書いてある制度もあります。
個人事業主でも対象ですか?
主要制度の多くは対象です。デジタル化・AI導入補助金は「中小企業等の定義」の全業種に「以下の会社及び個人事業主」と明記されています。ただし賃上げ要件が必須になる区分では、法人と扱いが違う場合があります(「従業員を雇用していない法人は役員と読み替え」という書き方なので、個人事業主に役員はいません)。
複数の補助金を同時に使えますか?
制度ごとに規定が違います。デジタル化・AI導入補助金は「1法人・1個人事業主あたり1申請のみ」ですが、インボイス枠・セキュリティ対策推進枠との併願は認められています。同一経費に複数の補助金を充てることは基本的にできません。
「上限450万円」と書いてあれば450万円もらえますか?
いいえ。上限は最大値で、実際の額は補助率(1/2、2/3など)と対象経費で決まります。さらに従業員数で上限が変わる制度もあります(省力化投資補助金カタログ注文型は制度として1,500万円ですが5人以下は500万円)。当サイトの制度ページでは「従業員5人以下の区分なら」の額も表示しています。
GビズIDプライムは何日かかりますか?
デジタル化・AI導入補助金など多くの国の補助金で必須です。申請から取得まで日数がかかるため、締切間際に始めると間に合いません。制度を検討し始めた時点で取得しておくのが安全です。
引用・転載について
この記事の判定結果と数字は自由に引用していただけます。引用の際は出典として当サイトへのリンクをお願いします。
出典: ひとり社長が押さえる国の主要補助金14制度 — ひとり社長の補助金(2026年8月17日時点の公募要領に基づく判定。2026年9月29日に一部を訂正・更新)
制度は改定されます。 申請前には必ず各制度の一次ソース(この記事にリンクしてあります)で最新の要領を確認してください。