「補助金を使いたい」と思って名前を調べると、持続化、ものづくり、IT導入、省力化、事業承継…と大きな制度名が並びます。ところが従業員0人のひとり社長が実際に申請できるものは、その中の一部です。

しかも「使えない」理由は制度ごとに違います。要領に「従業員数が0名の事業者」は補助対象外と書いてあるものもあれば、賃上げ要件の計算が0人だと成り立たないものもあり、逆に「従業員を雇用していない法人は役員と読み替える」とわざわざ書いてあるものもあります。

この記事は、国の主要14制度の公募要領を読んで、その線を引いたものです。2026年8月17日時点の一次ソースに基づいています。

結論(先に)

区分 制度数 内容
そのまま使える 4 従業員0人でも制度上申請できる
従業員が1人以上必要 5 0人には無関係。1〜5人なら効く
大型で実態が遠い 2 上限5億円級・共同研究体が前提
公募が終了 1 後継スキームあり
次回公募待ち 2 前回が締切済み/日程未公表

「従業員が1人以上必要」の5制度のうち4つは厚生労働省の雇用関係助成金で、そもそも従業員がいないと制度が成立しません。残る1つ(ものづくり補助金)は要領に従業員数の要件があります。

そのまま使える4制度

小規模事業者持続化補助金

商工会・商工会議所が窓口の、いちばん名前が知られている制度です。販路開拓や業務効率化の費用が対象で、補助上限は250万円(枠と特例により変動)。

2026年8月時点で動いているのは3つの枠です。

上限 受付 締切
<一般型・通常枠>第20回 250万円 2026年11月5日開始 2026年12月15日
<創業型>第4回 250万円 2026年11月5日開始 2026年12月15日
<一般型 災害支援枠(令和6年能登半島地震等)>10次 200万円 受付中 2026年10月16日

<創業型>は注意が必要です。 申請要件に「特定創業支援等事業」の証明書があり、取得に原則4回以上・1か月以上かかります。11月5日の受付開始を見てから動くと間に合いません。詳しくは特定創業支援等事業の記事にまとめました。

一次ソース: 商工会議所地区の事務局サイト

デジタル化・AI導入補助金2026(旧 IT導入補助金)

令和7年度補正予算からIT導入補助金が改称された制度です。ソフトウェア・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費が対象で、4つの枠があります。

上限 補助率
通常枠 450万円 1/2以内
インボイス枠(インボイス対応類型) 350万円 枠内で区分(PC等10万円・レジ等20万円)
インボイス枠(電子取引類型) 350万円 2/3以内
セキュリティ対策推進枠 150万円 中小 1/2 / 小規模事業者 2/3

1次締切は2026年8月25日17:00、2次以降は未公表です。

この制度は従業員0人の法人でも申請できることが要領に明文で書かれています。賃上げ目標の算定について、通常枠 公募要領 p.10 にこうあります。

従業員を雇用していない法人は、上記の従業員を役員と読み替え、役員報酬と役員数に応じて算出すること

さらに、要領の「小規模事業者の定義」には「会社役員及び個人事業主は『予め解雇の予告を必要とする者』に該当しないため『常時使用する従業員』には該当しない」とあります。つまりひとり社長は従業員0人=小規模事業者に該当し、セキュリティ対策推進枠の補助率が1/2から2/3に上がります。

賃上げ要件は申請額と過去の受給歴でゲートされています。初回申請で150万円未満なら、賃上げ要件は一つもかかりません(150万円以上、または過去にIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けている場合は必須)。

入口の条件としてGビズIDプライムの取得とIPA「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。GビズIDは取得に日数がかかるので、締切間際に始めると間に合いません。

一次ソース: 事務局サイト通常枠 公募要領

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)

あらかじめ登録された省力化製品のカタログから選んで導入する形の制度です。随時公募で受付中(この記事の時点で締切は2027年3月31日)。

上限は従業員数で変わります。5人以下は500万円、大幅な賃上げを行う場合は750万円です(6〜20人は750万/1,000万円、21人以上は1,000万/1,500万円)。制度としての上限は1,500万円ですが、ひとり社長が見るべき数字は500〜750万円のほうです。

要領上、従業員0人の法人も申請できます。ただし2回目以降の交付申請では、申請時点で常勤従業員がいないと最低賃金の賃上げ要件を満たせないため申請できません。またカタログ登録製品の導入と販売事業者との共同申請が前提です。

一次ソース: カタログ注文型の事務局サイト

事業再構築補助金(共同申請)

リース会社との共同申請の形が残っています。上限は制度として1.5億円ですが、従業員20人以下の区分は1,500万円(短期に大規模な賃上げを行う場合2,000万円)です。

従業員が1人以上必要な5制度

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

従業員0人では申請できません。 要領に「常時使用する従業員の数が1人以上であることが要件であり、従業員数が0人の場合は目標値の設定ができないため申請できない」とあります。

2026年8月時点で23次締切分が動いており、2026年8月7日に23次の採択結果が公表されています。従業員が1人以上いるなら有力な選択肢です。

一次ソース: 総合サイト

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

2026年から始まった制度で、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つがあります。第1回は申請受付2026年9月30日〜締切2026年10月30日18:00

こちらも従業員0人は申請できません。公募要領 1-4-2「補助対象外となる事業者」に明記されています。

  1. 応募申請時点で従業員数が0名の事業者 ※ 中小企業等の新規事業への進出を通した企業規模の拡大や賃上げを事業の目的とすることから、従業員が0名の事業者は対象となりません。

従業員1〜5人なら革新的新製品・サービス枠で上限750万円(賃上げ特例適用時850万円)、新事業進出枠なら1〜20人で2,500万円(同3,000万円)です。

一次ソース: 事務局サイト第1回 公募要領

厚生労働省の雇用関係助成金(3制度)

業務改善助成金(事業場内最低賃金の引上げ+設備投資)、キャリアアップ助成金(有期から無期への転換など)、人材開発支援助成金(従業員の訓練費用)、両立支援等助成金(育休・介護休業の環境整備)は、いずれも従業員がいないと制度が成立しません

ひとり社長が人を雇い始めたときに、はじめて視野に入る制度群です。なお当サイトはこれらを掲載していません。厚生労働省の助成金は都道府県労働局が窓口で、国の補助金公募データベース(jGrants)に載らない別系統だからです。

大型で実態が遠い2制度

中小企業成長加速化補助金は売上高100億円を目指す企業の大規模投資向けで、上限5億円。成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)は大学・公設試との共同研究体が前提です。

制度上は中小企業が対象ですが、ひとり社長の実態からは遠いので、当サイトでは一覧の後ろに回しています(隠してはいません)。

公募が終了した1制度

中小企業新事業進出補助金は、事務局サイトに「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。上に挙げた「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が後継です。

なお「ものづくり補助金も統合されて終了した」と書いている解説を見かけますが、ものづくり補助金の事務局サイトには終了の記載がなく、23次締切分が動いています(2026年8月17日確認)。名称に「ものづくり」を含む新スキームが始まったことと、旧制度が終わったことは別の話です。

次回公募待ちの2制度

事業承継・M&A補助金は15次公募が2026年7月24日で締切済み、次回は未公表です(事務局サイト)。

中小企業省力化投資補助金(一般型)は第7回が2026年7月31日で締切、第8回の公募開始は2026年8月18日ですが受付開始日と締切は未公表です(一般型の事務局サイト)。

この記事の作り方

当サイトは国と自治体の補助金を毎日収集し、AIが公募要領PDFを読んで「従業員0人のひとり社長が申請できるか」を判定しています。この記事の判定はその結果で、根拠になった条文はすべて一次ソースを引用しています。

上の14制度は台帳として管理しており、毎日DBと突き合わせて「載っていない主要制度」を検出しています。この記事を書いた発端も、日本でもっとも検索される補助金(小規模事業者持続化補助金)が当サイトのデータベースに1件も無いことに、利用者の指摘まで気づけなかったことでした。

各制度の詳しい条件・対象経費・必要書類は制度ごとのページで確認できます。トップページの「国の主要制度」から辿れます。

よくある質問

従業員0人でも本当に補助金は使えますか?

使えます。この記事の「そのまま使える4制度」がそれです。ただし制度ごとに理由が違うので、要領の該当箇所を確認してください。デジタル化・AI導入補助金のように「従業員を雇用していない法人は役員と読み替える」と明文で書いてある制度もあります。

個人事業主でも対象ですか?

主要制度の多くは対象です。デジタル化・AI導入補助金は「中小企業等の定義」の全業種に「以下の会社及び個人事業主」と明記されています。ただし賃上げ要件が必須になる区分では、法人と扱いが違う場合があります(「従業員を雇用していない法人は役員と読み替え」という書き方なので、個人事業主に役員はいません)。

複数の補助金を同時に使えますか?

制度ごとに規定が違います。デジタル化・AI導入補助金は「1法人・1個人事業主あたり1申請のみ」ですが、インボイス枠・セキュリティ対策推進枠との併願は認められています。同一経費に複数の補助金を充てることは基本的にできません。

「上限450万円」と書いてあれば450万円もらえますか?

いいえ。上限は最大値で、実際の額は補助率(1/2、2/3など)と対象経費で決まります。さらに従業員数で上限が変わる制度もあります(省力化投資補助金カタログ注文型は制度として1,500万円ですが5人以下は500万円)。当サイトの制度ページでは「従業員5人以下の区分なら」の額も表示しています。

GビズIDプライムは何日かかりますか?

デジタル化・AI導入補助金など多くの国の補助金で必須です。申請から取得まで日数がかかるため、締切間際に始めると間に合いません。制度を検討し始めた時点で取得しておくのが安全です。

引用・転載について

この記事の判定結果と数字は自由に引用していただけます。引用の際は出典として当サイトへのリンクをお願いします。

出典: ひとり社長が押さえる国の主要補助金14制度 — ひとり社長の補助金(2026年8月17日時点の公募要領に基づく判定)

制度は改定されます。 申請前には必ず各制度の一次ソース(この記事にリンクしてあります)で最新の要領を確認してください。