前回(2026年7月28日)、当サイトは募集中206制度を全数判定して「ひとり社長が使える補助金の65%は地域限定」という結果を公開しました。金額の中央値も、地域限定200万円に対して全国4,950万円——身の丈に合うのは自治体側、という結論です。
あれから10日。母数は286制度(+38.8%)になりました。そして今回は、前回とは別の軸を測っています。「手間」です。
補助金を探すとき、多くの人は金額と対象条件を見ます。しかし実際に申請するかどうかを決めるのは、「この書類を自分ひとりで揃えられるか」「もらった後に何をさせられるか」のほうです。従業員0人のひとり社長にとって、ここは金額と同じかそれ以上に効きます。
当サイトは公募要領をAIが読む際に、必要書類・採択後の義務・申請工数を1件ずつ構造化して保存しています。その全数集計は、おそらく他のどこにも存在しません。
結果①:地域限定は65.0% → 76.2%へ、さらに伸びた
まず前回の続報です。
対象地域の内訳は3時点でこう動いた
募集中制度の全数判定・161件 → 206件 → 286件
2026年7月12日 161件
全国 85件・52.8%/地域限定 76件・47.2%
2026年7月28日 206件
全国 72件・35.0%/地域限定 134件・65.0%
2026年8月7日 286件
全国 68件・23.8%/地域限定 218件・76.2%
出典: 「ひとり社長の補助金」調べ(判定データベースの全数集計)
26日間で47.2% → 76.2%。全国対象の制度は実数でも85件 → 68件に減っています(募集終了による自然減)。増えているのは地域限定だけです。
判定の全体像も出しておきます。286制度のうち、無条件でひとり社長OKと確認できたのは16件(5.6%)、条件つきが218件(76.2%)、対象外が52件(18.2%)。条件つきのうち補助上限1億円以上の大型が28件(条件つきの12.8%)、調査・委託の公募が7件です。これらを除いた「現実的にひとり社長向き」は201件(70.3%)でした。
結果②:申請の重さを測ると、72.6%が「重い」側にある
ここからが今回の本題です。当サイトは制度ごとに申請工数を1〜5でスコアリングしています。ひとり社長が申請しうる234制度(無条件OK+条件つき)の分布はこうなりました。
| 申請工数 | 件数 | 補助上限の中央値 | 必要書類 | 採択後の義務 |
|---|---|---|---|---|
| スコア2(軽い) | 6件 | 30万円 | 3.2点 | 2.2項目 |
| スコア3 | 58件 | 25万円 | 4.7点 | 3.1項目 |
| スコア4 | 44件 | 102万円 | 8.5点 | 6.1項目 |
| スコア5(重い) | 126件 | 1,500万円 | 11.7点 | 8.5項目 |
きれいに比例しています。 工数が上がるほど、必要書類も採択後の義務も、そして金額も増える。これは直感どおりですが、全数で確認できたのは初めてです。
2つに束ねると輪郭がはっきりします。
「軽い」と「重い」で何が違うか
ひとり社長が申請しうる234制度(2026年8月7日時点)
軽い(工数1〜3) 64件・27.4%
補助上限の中央値 25万円/必要書類 4.6点/採択後の義務 3.0項目
重い(工数4〜5) 170件・72.6%
補助上限の中央値 750万円/必要書類 10.8点/採択後の義務 7.9項目
出典: 「ひとり社長の補助金」調べ(判定データベースの全数集計)
申請できる制度の7割強は「重い」側にあります。 書類10.8点を揃え、採択後に7.9項目の義務を負う。ひとりで回すには相応の覚悟が要る水準です。
一方で軽い側の27.4%は、書類4.6点・義務3.0項目。ただし補助上限の中央値は25万円です。手間が軽いぶん、返ってくる額も小さい。ここに例外はありませんでした。
結果③:全国対象で「軽い」のは、61件中3件だけ
そして今回いちばん効いた発見がこれです。この「軽い/重い」は、全国と地域限定でまったく違う分布をしていました。
| 制度数 | うち軽い(工数1〜3) | 軽い比率 | 必要書類 | 採択後の義務 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 全国対象 | 61件 | 3件 | 4.9% | 12.1点 | 9.5項目 |
| 地域限定 | 173件 | 61件 | 35.3% | 8.1点 | 5.5項目 |
全国対象の制度で手間が軽いものは、61件中3件しかありません。 地域限定の35.3%と比べて、7倍の開きです。
必要書類も全国12.1点に対して地域限定8.1点、採択後の義務も9.5項目に対して5.5項目。前回は「金額が噛み合わない」という話でしたが、手間の面でも全国制度はひとり社長向きではなかったということになります。
前回の結論(自分の都道府県から見る)は、別の軸からも裏付けられた形です。
結果④:89.7%の制度には「採択後の義務」がある
補助金は「採択されたら振り込まれて終わり」ではありません。234制度のうち210件(89.7%)に、採択後の義務が明記されていました。全体の平均は6.5項目です。
最も多いのは実績報告書の提出で、事業が終わったあとに「何にいくら使い、何を達成したか」を報告する義務です。ほかに頻出するのは以下のようなものでした。
- 遂行状況報告書の提出(事業の途中経過の報告)
- 取得財産等管理台帳の整備(補助金で買った物の管理簿)
- 計画変更時の承認申請(勝手に中身を変えられない)
- 取得財産の目的外使用の禁止(買った設備を別用途に転用できない)
- 消費税等仕入控除税額の確定に伴う補助金の返還(条件により一部返還)
最後の項目は特に見落とされます。「もらった補助金を後から一部返す」ケースが制度上ありうるということです。
必要書類の平均は9.1点でした。そして注目すべきは、書類名として最も多く登場したのが「その他市長が必要と認める書類」「その他知事が必要と認める書類」といった包括条項だったことです。これを含む制度は44件(18.8%)ありました。
つまり、公募要領に書かれた書類を全部揃えても、それで確定ではない制度が2割近くある。逆算して準備するときは、この余地を見込んでおく必要があります。
結果⑤:gBizIDプライムの必須率は、全国78.7% / 地域限定18.5%
もう一つ、着手時点の壁を測りました。国の電子申請ポータルjGrantsを使う制度は、gBizIDプライムというアカウントが要ります。これは印鑑証明書を郵送して取得するもので、発行まで2〜3週間かかります。締切間際に気づくと、それだけで詰みます。
| gBizIDプライム必須 | 比率 | |
|---|---|---|
| 全国対象(61件) | 48件 | 78.7% |
| 地域限定(173件) | 32件 | 18.5% |
全国制度の約8割はgBizIDプライムが要ります。 一方、地域限定は2割未満——多くが窓口提出や自治体独自の電子申請だからです。
全体では234件中80件(34.2%)。3件に1件です。まだ持っていないなら、具体的な制度が決まる前に取っておくべきという結論は変わりません(gBizIDプライムの取得手順にまとめています)。
この結果から言える、探し方の修正点
前回の3点に、今回1点を足します。
- まず自分の都道府県のページを見る。 金額(前回)だけでなく手間(今回)の面でも、ひとり社長に噛み合うのは地域限定です(例:東京都/大阪府/福岡県)
- 市区町村レベルまで降りる。 地域限定218件は、その多くが自治体独自の制度です
- 「対象外」を見分ける手間は避けられない。 公募要領の読み方に、どこを読めば5分で判別できるかをまとめています
- 金額だけで選ばない。 上限750万円の制度は、書類10.8点と採択後7.9項目の義務がセットです。上限25万円で書類4.6点のほうが、実際に完走できることもあります。「取れる額」ではなく「取り切れる額」で選んでください
補助金が入金されるまでの流れと資金繰りの現実は補助金は「後払い」に、「中小企業向けと書いてあるのに出せない」現象の中身は中小企業向けなのに出せない理由にまとめています。
調査の概要
- 時点: 2026年8月7日(前回は2026年7月28日、前々回は2026年7月12日)
- 母数: 当サイトが収集・判定し公開している募集中の補助金・助成金286件。内訳はjGrants[国の電子申請ポータル]掲載制度142件、自治体サイトから直接収集した制度132件、東京都中小企業振興公社12件。日本のすべての補助金を網羅するものではありません
- 手間の集計対象: 上記のうち、ひとり社長が申請しうる234件(無条件OK16件+条件つき218件)。対象外と判定した52件は除いています
- 判定方法: AIによる公募要領の読解+機械照合+敵対的な二重判定+人間による監査・裁定。「ひとり社長OK」は制度上・無条件で申請可能と確認できたもののみ
- 申請工数スコアの定義: 公募要領から読み取れる申請の重さを1〜5で機械採点したもの(大きいほど重い)。事業計画の要求水準・必要書類の点数・審査プロセスの段数などを反映します。絶対的な難易度指標ではなく、制度間の相対比較のための値です
- 必要書類・採択後の義務の点数: 公募要領に列挙されている項目数です。1項目の重さは制度ごとに異なるため、点数の大小がそのまま負担の大小を意味するわけではありません
- 中央値の母数: 補助上限額が公表されている制度のみ。「上限額は要領参照」とされる制度は除外
- 再現性: 集計は判定データベースからの機械集計です(手作業の分類はありません)
※本レポートは時点スナップショットです。制度は毎日入れ替わるため、最新の件数・一覧はトップページで毎日自動更新されています。過去の数字は第1回・第2回に残しています。
本調査の引用について
本レポートの数値・グラフは、出典(「ひとり社長の補助金」調べ・本ページへのリンク)を明記のうえ、自由に引用いただけます。メディア・支援機関の方の問い合わせはお問い合わせからどうぞ。
次回の更新は日付ではなく、数字が動いたときに行います。母数±15%・地域限定±5pt・無条件OK±1.0ptのいずれかを超えた時点で再集計・再公開する運用に変更しました(本レポート自体、前回から母数+38.8%・地域限定+11.2ptの変動を検知して公開しています)。
そのまま使える引用文(コピペ可):
「ひとり社長の補助金」(hitori-hojokin.com)の調査(2026年8月7日時点)によると、従業員0人のひとり社長が申請しうる補助金234制度のうち、申請の手間が軽いものは27.4%にとどまった。全国対象の制度に限ると61件中3件(4.9%)で、地域限定の35.3%とは約7倍の開きがある。必要書類は平均9.1点、採択後の義務は平均6.5項目で、89.7%の制度に採択後の義務が設定されていた。またgBizIDプライムの必須率は全国対象78.7%に対し地域限定18.5%だった。