ひとり社長・マイクロ法人・フリーランス(個人事業主)は、制度の情報弱者になりやすい立場です。会社員なら総務が、大企業なら担当部署がやってくれることを、全部ひとりで調べなければいけません。しかも国の制度は省庁ごとの縦割りで、どこに何があるのか誰もまとめてくれない。

この記事は、その全体像を1枚に整理する地図です。「攻め・守り・備え・つなぎ」の4分類で見ると、驚くほどシンプルになります。

4分類マップ

ひとり社長の「国の制度」全体マップ

① 攻め

補助金・助成金

返済不要のお金で事業を伸ばす(国・自治体)

② 守り

共済

退職金と取引先の倒産に備える(中小機構)

③ 備え

年金の上乗せ

生活の土台を厚くする(法人か個人かで別)

④ つなぎ

融資・カード

「後払い」の立替期間を埋める(公庫ほか)

順に見ていきます。


① 攻め — 補助金・助成金(返済不要)

このサイトの本業です。国や自治体が、政策目的にかなう事業に対して返さなくていいお金を出す制度。

上のパネルにある通り、ひとり社長・個人事業主が申請できる可能性のある募集中の制度を、毎日自動更新で掲載しています(最新の件数は上のパネルの数字をご覧ください)。

最大の壁は「対象者要件」

補助金の一番のハードルは書類でも競争率でもなく、そもそも自分が対象かどうかです。「中小企業・小規模事業者向け」と書いてあっても、従業員0人のひとり社長は弾かれることがあります(→ 「中小企業向け」なのにひとり社長が申請できない5つの理由)。

当サイトは、AIで全制度の公募要領を読み、この判定を先に済ませて掲載しています。

この門がどれくらい狭いかは、数字にしてあります。募集中161制度の全数判定で、「無条件で申請できる」と言い切れたのは5.0%(2026年7月調査 → 調査レポート)。いま何件が募集中かは毎日更新データで確認できます。

「補助金」と「助成金」の違い — 従業員0人なら先に知るべきこと

似た言葉ですが、従業員0人にとっては天と地の差があります。「助成金」と名のつく制度の多く(キャリアアップ助成金・雇用調整助成金など厚生労働省系)は、従業員を雇用していること(雇用保険の適用事業所であること)が前提です。つまり従業員0人のひとり社長・フリーランスは、要件を読むまでもなく土俵に乗れないものが大半。「フリーランス 助成金」で検索して徒労に終わるのは、このためです。

一方、経済産業省・自治体系の「補助金」には従業員0人でも申請できるものがあります。当サイトが収集・判定しているのは主にこちら側です。

攻めの入口

  1. gBizIDプライムを先に取る(無料・取得に1〜2週間)。国の補助金の電子申請に必須で、決まってから取ると締切に間に合いません
  2. 3つの質問で診断 → あなたが出せる制度に絞り込む
  3. 制度ページで「間に合う?チェック」と「いくら戻る?」を確認
  4. 本命が見つかったら 公募要領を10分で読む
  5. 申請は Jグランツ(電子申請) から

攻めの落とし穴

補助金は後払いです。先に全額を自分で払い、実績報告の審査を経て入金されます(→ 補助金は「後払い」)。この立替こそが、次の「つなぎ」が必要になる理由です。

また補助金は審査で落ちることが普通にあります。不採択になったときの立て直し方はこちらに分けてまとめました。


② 守り — 共済(中小機構)

利益が出るようになったら考える領域です。どちらも中小機構が運営する公的制度ですが、性格がまったく違います

小規模企業共済 経営セーフティ共済
目的 ひとり社長の退職金を積む 取引先の倒産に備える
掛金の税扱い 役員"個人"の所得控除 法人の損金/個人は必要経費
掛金 月1,000〜70,000円 月5,000〜200,000円(総額800万円まで)
加入資格 従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社役員 継続して1年以上事業(創業1年目は不可)
分岐点 240か月(元本割れの境) 40か月(解約手当金100%の境)

両者の税扱いを混同しないでください。 小規模企業共済の掛金は会社の経費ではなく、あなた個人の所得控除です。

そして両方に共通する、あまり語られない真実——

どちらも「節税」ではなく「課税の繰延べ」です。

受け取るときに課税されます。小規模企業共済は所得の種類が退職所得に変わることで有利になり、経営セーフティ共済は利益の平準化の道具になる。それが正確な理解です。

なお経営セーフティ共済は、2024年10月の改正で解約後2年間は再加入しても損金算入できなくなりました。ネット上に残る「出し入れ節税」の解説は、もう成立しません。


③ 備え — 社会保険と年金の上乗せ

ここは法人か個人事業主かで、使える制度が正反対になります(→ #1 個人事業主とマイクロ法人、どっちで始める?)。

法人のひとり社長

自分に役員報酬を払うなら、健康保険・厚生年金に強制加入です。手続きの期限は設立から5日以内(→ #5 設立後の手続きチェックリスト)。厚生年金は将来の年金が国民年金より手厚くなる反面、保険料は会社と個人で折半=実質全額あなたの負担です。

個人事業主

国民年金(第1号被保険者)です。そのぶん、個人事業主だけが使える上乗せの選択肢があります。

  • 付加年金(月400円の上乗せ)
  • 国民年金基金
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)

ただし組み合わせに制限があります。付加年金と国民年金基金は同時に加入できません。 また第1号被保険者の場合、国民年金基金とiDeCoの掛金は合計で月68,000円が上限です(付加保険料を納めている場合はその分が枠に含まれます)。この3つの選び方と組み合わせルールは、個人事業主だけの「年金の上乗せ」3択で1枚に整理しました。

なおiDeCoの上限は、法人のひとり社長(月23,000円)と個人事業主(月68,000円)で約3倍違います。小規模企業共済との併用も含めた整理は、小規模企業共済とiDeCoは併用できるへ。

なお、この拠出限度額は制度改正で引き上げが予定されています。最新の数字は必ず一次情報(日本年金機構国民年金基金連合会)でご確認ください。


④ つなぎ — 資金繰り

補助金が後払いである以上、立て替える体力が要ります。ここを間違えると、採択されたのに事業が回らないという本末転倒が起きます。

正攻法の順番は決まっています。

  1. 自己資金(最も健全。無理のない事業規模から)
  2. 法人カード(経費をカード払いにすると引き落としまで数十日の猶予が生まれる)
  3. 公的融資——日本政策金融公庫の創業融資や、自治体・信用保証協会・金融機関が連携する制度融資。金利が低く、正規の選択肢です(→ 公庫→制度融資の正攻法

⚠ ファクタリングや高金利のビジネスローンには安易に頼らないでください。 「即日資金化」を謳うサービスは手数料が重く、資金繰りに困った事業者ほど深みにはまります。当サイトが推奨するのは、正規のカードと公的融資までです。

なお、補助金の入金先は法人名義口座が原則です(→ #6 法人口座)。


全制度に共通する「たった一つの壁」

補助金も、共済も、年金の上乗せも——すべて「対象者要件」で人を選びます

  • 補助金:従業員数・業種・地域・事業内容
  • 小規模企業共済:従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)
  • 経営セーフティ共済:継続1年以上の事業
  • 付加年金・国民年金基金:第1号被保険者(=個人事業主)のみ

「良さそうな制度を見つけた」の次にやるべきは、自分が対象かを確認すること。当サイトが補助金についてこの判定を先に済ませているのは、ここでつまずく人があまりに多いからです。

使う順番(ひとり社長の現実解)

  1. gBizIDプライムを取る(無料・今すぐ・1〜2週間かかる)
  2. 診断で、いま出せる補助金を知る(攻め)
  3. 経理の配管を作る(実績報告で完走するため)
  4. 利益が出てきたら共済を検討(守り)——ただし経営セーフティ共済は事業1年以上から
  5. 立替が必要なときはカード → 公的融資の順(つなぎ)

まずは、あなたが出せる補助金があるかどうかから確かめてみてください。


本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・社会保険・融資・加入判断の助言ではありません。各制度の要件・掛金・税制・限度額は変更されます。必ず一次情報(中小機構日本年金機構日本政策金融公庫国税庁・各制度の公募要領)をご確認のうえ、具体的な判断は税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。当サイトは申請書類の作成代行は行いません。