小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)は、個人事業主でも申請できます。公募要領の「補助対象者の範囲」に「個人事業主(商工業者であること)」と書かれています。
ただし、ひとりで営んでいる個人事業主には、上限の見え方に落とし穴があります。検索するとよく出てくる「最大250万円」は、従業員がいる事業者が特例を重ねたときの金額です。
この記事は、2026年11月5日に受付が始まる<一般型・通常枠>第20回と<創業型>第4回の公募要領を読んで確かめた内容です。
結論(先に)
| 一般型・通常枠(第20回) | 創業型(第4回) | |
|---|---|---|
| 個人事業主は申請できるか | できる(商工業者であること) | できる(開業1年以内などの条件あり) |
| ひとりのときの上限 | 50万円(インボイス特例を満たせば100万円) | 200万円(インボイス特例を満たせば250万円) |
| 補助率 | 2/3 | 2/3 |
| 受付 | 2026年11月5日〜12月15日17:00 | 2026年11月5日〜12月15日17:00 |
| 当サイトの掲載 | <一般型・通常枠>第20回 | <創業型>第4回 |
一般型と創業型は、どちらか一方にしか申請できません(後述)。
個人事業主が対象になる条件
「小規模事業者」であること
持続化補助金の対象は「小規模事業者」です。業種ごとに、常時使用する従業員の数で決まります。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ひとりで営む個人事業主は、どの業種でも条件を満たします。数え方について、公募要領は次のように定めています。
- 会社役員や同居の親族従業員は含まれない
- 日雇労働者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者も含まれない
家族に手伝ってもらっている場合も、同居の親族であれば従業員の数には入りません。
対象にならない個人事業主
公募要領の「補助対象にならない者」には、次のような人が挙がっています。
- 医師、歯科医師、助産師
- 系統出荷による収入のみである個人農業者(林業・水産業者も同様)
- 申請時点で開業していない創業予定者
最後の点は注意が必要です。公募要領は「既に税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外」としています。開業届を出していても、申請時点までに事業を始めていなければ対象外です。
また、過去に持続化補助金の補助事業を行った人は、事業実施期間の終了月の翌月から1年がたち、「事業効果および賃金引上げ等状況報告書」(様式第14)を出し終えていないと申請できません。
ひとりの個人事業主が「250万円」に届かない理由
一般型・通常枠の補助上限は50万円です。そこに2つの特例が上乗せされます。
| 特例 | 上乗せ | ひとりの個人事業主 |
|---|---|---|
| インボイス特例 | +50万円 | 使える(要件を満たせば) |
| 賃金引上げ特例 | +150万円 | 使えない |
| 両方 | +200万円(上限250万円) | 使えない |
賃金引上げ特例は「従業員」がいないと使えない
賃金引上げ特例は、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増やす事業者向けの特例です。ここでいう従業員について、公募要領は「非常勤を含む。代表者、役員及び専従者は含めない」と定めています。そのうえで、比較する期間に「算定対象となる従業員が存在しない場合は、1人あたり給与支給総額を算出できないため、本特例の対象外」と明記しています。
つまり、ひとりで営む個人事業主や、家族の専従者だけで営む個人事業主は、賃金引上げ特例を使えません。赤字の事業者の補助率が3/4に上がる仕組みも、この特例の中にあるため使えません。
これから人を雇っても、第20回では間に合わない可能性が高いです。比べるのは「2027年4月1日〜2028年3月31日」と「その前年同月の12か月(2026年4月〜2027年3月)」で、算出の対象になるのは、両方の期間で全月分の給与を受けた従業員だけです。
インボイス特例はひとりでも使える
インボイス特例は、補助事業の終了時点で適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けていて、次のどちらかに当てはまる事業者が対象です。
- 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で、一度でも免税事業者だった
- 2023年10月1日以降に創業した
免税事業者からインボイス登録をした個人事業主の多くは、1に当てはまります。ただし、過去に持続化補助金で「インボイス特例」または「インボイス枠」を使った事業者は対象外です。登録するかどうかの考え方はインボイス制度の記事にまとめています。
特例を希望して要件を1つでも満たさなかった場合は、上乗せ分だけでなく補助金の全体が交付されません。 公募要領にそう明記されています。
補助率2/3なので、満額には経費が1.5倍要る
補助率は2/3です。上限100万円を満額で受けるには、対象経費が150万円必要です。しかも補助金は後払いで、先に自分で全額を払います。入金までの流れは補助金の後払いの記事をご覧ください。
開業1年以内なら「創業型」が選べる
ひとりの個人事業主にとって、上限の面で有利なのは<創業型>です。創業型には賃金引上げ特例がそもそも無いので、従業員がいなくても上限200万円(インボイス特例で250万円)まで使えます。補助率は2/3です。
条件は、「特定創業支援等事業」による支援を受けた日と開業日の両方が、公募締切(第4回は2026年12月15日)から数えて過去1年以内であることです。個人事業主の場合は次の2点が求められます。
- 開業届の「開業・廃業等日」がこの期間に入っていること
- 個人事業主本人が支援を受けていること(家族専従者などが受けた場合は対象外)
特定創業支援等事業は市区町村が行う創業支援で、原則4回以上・1か月以上かかります。受付開始(11月5日)を待ってから動くと間に合いません。詳しくは特定創業支援等事業の記事にまとめています。
一般型と創業型は重ねて申請できない
両方の公募要領に、重複申請はできないと書かれています。
- 一般型の公募要領は「<創業型>に申請中または採択を受けている事業者」を対象外とし、「<創業型>と同時に申請できません」としています
- 創業型の公募要領にも「<一般型>との重複申請はできません」とあります
開業1年以内で条件を満たすなら、創業型のほうが上限は大きくなります。満たさなければ一般型です。
申請までにやること
スケジュール
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 申請受付 | 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00 |
| 事業支援計画書(様式4)の発行の受付締切 | 2026年12月4日(金) |
本当の締切は12月4日です。 申請には、地域の商工会・商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」が必要です。その発行依頼の受付が申請締切より11日早く終わり、公募要領には「受付締切以降の発行依頼は、いかなる理由があってもできません」とあります。
申請は電子申請システムだけで受け付けていて、郵送はできません。ログインには「GビズIDプライム」のアカウントが要るので、早めに取得しておきます。事業所の所在地によって、窓口が商工会(商工会地区)か商工会議所(商工会議所地区)かに分かれます。
個人事業主が出す書類
一般型の公募要領で、個人事業主に求められている主な書類は次のとおりです。
- 直近の確定申告書:第一表・第二表と収支内訳書(1・2面)、または第一表・第二表と所得税青色申告決算書(1〜4面)。開業してから決算期を1回以上迎えていれば、所得額にかかわらず出します
- 決算期を一度も迎えていない場合:開業日が書かれた開業届の写しと、開業後に売上が出ていることを示す売上台帳などの写し。開業日の記載がない開業届は無効です
- インボイス特例を希望する場合:適格請求書発行事業者の登録通知書の写し(登録申請中の場合は扱いが異なります)
このほか、経営計画などを電子申請システムに入力し、上の様式4を受け取ります。
つまずきやすい経費
持続化補助金は、販路開拓とそれにあわせた業務効率化のための経費が対象です。個人事業主がつまずきやすいのは次の2点です。
- パソコン、事務用プリンター、タブレット端末などは対象外です。公募要領は、汎用性が高く目的外に使える物を補助対象外にしています(パソコンと補助金の記事)
- ウェブサイト関連費だけでは申請できません。ほかの経費と一緒に申請する必要があり、この経費にかかる補助金の額は30万円(税込)までです
ほかの対象外経費は補助金で「買えないもの」の記事にまとめています。
災害支援枠は被災した事業者だけ
持続化補助金には、能登半島地震などと熊本地震の「災害支援枠」もあります(どちらも2026年10月16日締切)。これは被災地域で被害を受けた事業者だけが対象の枠です。被災していない個人事業主は、上の一般型か創業型を選びます。主要な補助金のなかでの位置づけは国の主要補助金14制度の記事にまとめています。
よくある質問
開業届を出したばかりでも申請できますか?
申請時点で事業を始めていれば、申請できます。一度も決算期を迎えていない場合は、確定申告書の代わりに、開業日が書かれた開業届の写しと売上台帳などの写しを出します。ただし、開業届上の開業日が申請日より後の場合や、開業届を出していても事業を始めていない場合は対象外です。開業1年以内なら創業型も検討できます。
家族に手伝ってもらっています。従業員に数えますか?
同居の親族従業員は、小規模事業者かどうかを判断する「常時使用する従業員」には含まれません。賃金引上げ特例でも、専従者は従業員に含めません。家族を専従者にしているだけの個人事業主は、賃金引上げ特例を使えないことになります。
一般型と創業型の両方に申請できますか?
できません。一般型は「<創業型>に申請中または採択を受けている事業者」を対象外にしており、創業型も「<一般型>との重複申請はできません」としています。条件を満たすほうを1つ選びます。
パソコンは補助対象になりますか?
なりません。公募要領は、パソコン、事務用プリンター、タブレット端末、PC周辺機器などを、汎用性が高く目的外使用になりうるものとして対象外にしています。
上限250万円はひとりでも受けられますか?
一般型・通常枠では受けられません。250万円は、インボイス特例と賃金引上げ特例の両方を満たした場合の上限で、賃金引上げ特例は従業員(代表者・役員・専従者を除く)がいないと使えません。ひとりの個人事業主の一般型の上限は50万円、インボイス特例を満たせば100万円です。創業型なら、条件を満たせば上限200万円、インボイス特例で250万円です。
免責と一次ソース
この記事は制度の一般的な解説で、2026年10月5日時点の公募要領に基づいています。公募要領は改定されることがあります。 申請前に、必ず最新の公募要領と事務局の案内をご確認ください。補助金の申請可否は個別の事情によって変わります。当サイトは補助金の申請代行・書類作成の代行は行いません。具体的な手続きは、地域の商工会・商工会議所、補助金の事務局、または税理士・行政書士・中小企業診断士などの専門家にご相談ください。