経理の自動化、問い合わせ対応、書類の下書き——ひとり社長こそ、AIやデジタルツールで「自分の時間」を買う効果が大きい立場です。そしてその導入費用には、返済不要の補助金が使えることがあります。

ただし、先に正直にお伝えします。この分野の補助金は、名前も枠も中身も、年度ごとに変わります。その象徴が、長年「IT導入補助金」と呼ばれてきた国の定番制度が、2026年度に「デジタル化・AI導入補助金」へ改称されたことです(公式サイト)。去年の記事の知識は、今年はもう名前から違う。

だからこの記事は、特定の年度の制度名や補助率を覚えてもらう記事ではありません。名前が変わっても迷わない「3つの系統」の地図と、公募要領のどこを最初に見るべきかをお渡しします。

結論の地図:AI・デジタル導入の補助金は3系統

系統 性格 ひとり社長との相性
国の定番(デジタル化・AI導入補助金 = 旧IT導入補助金) 会計・受発注・AIツールなどの導入費を広く支援。毎年度、形を変えて継続 ◎ 個人事業主・小規模も対象。ただし「登録ベンダー経由」という独特の仕組み
省力化・省人化系(省力化投資補助金など) 「人手不足の解消」が目的。ロボット・システムへの投資を支援 △ 目的が「人手不足」なので、従業員数や賃上げの要件が置かれやすい。対象者要件を最初に確認
自治体のデジタル化支援 都道府県・市区町村が独自に上乗せ。小規模事業者向けの使いやすい枠も ○ 地域限定なので競争が緩やか。ただし探しにくい(当サイトの出番です)

いま募集中の制度は、この記事の下にある「関連する募集中の制度」(毎日自動更新)と、設備整備・IT導入をしたいのページで確認できます。制度名を検索エンジンで探すより確実です。


① 国の定番:デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

国のデジタル導入支援の本丸です。2026年度の改称で名称に「AI」が入り、AIツールの導入支援が前面に出ました。名前は変わりましたが、制度の骨格は長年変わっていません。この骨格こそ覚える価値があります。

変わらない骨格(ここを覚える)

  1. 「登録ベンダー経由」が必須。 好きなツールを買って領収書を出す方式ではなく、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と、登録済みのツールの組み合わせで申請します。つまり入口は「ツール選び」ではなく「登録ベンダー探し」。導入したいツールが決まっているなら、そのツールの公式サイトで「IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)対応」と謳っているかを見るのが最短です。
  2. 個人事業主・従業員0人の法人も申請できる建て付け。 「中小企業・小規模事業者向け」の中に個人事業主が明示されており、ひとり社長が入口で弾かれる制度ではありません(→ 弾かれる制度の見分け方は「中小企業向け」なのにひとり社長が申請できない5つの理由)。
  3. 国の電子申請の常として、gBizIDプライムが前提。 取得に日数がかかるので、申請を思い立つ前に作っておくのが正解です(→ gBizIDプライムの取り方)。

毎年変わる部分(ここは暗記しない)

補助率・上限額・枠の構成(通常枠・インボイス対応枠など)・公募スケジュールは、年度と公募回ごとに変わります。この記事に数字を書いても、あなたが読む頃には古くなっている可能性があるので、あえて書きません。必ず公式サイトの現在の公募要領で確認してください。


② 省力化・省人化系:ひとり社長は「対象者要件」を最初に読む

「省力化投資補助金」(公式サイト)に代表される系統です。AIやロボットで業務を省人化する投資を支援する、金額の大きい制度群ですが、ひとり社長には注意点がひとつあります。

この系統の政策目的は「人手不足の解消」です。そのため、従業員数の下限や賃上げ目標が要件に置かれる枠がある——つまり「従業員0人」だと、事業内容ではなく入口の対象者要件で弾かれる場合があるのです。枠や公募回によって扱いが異なるため、ここで「申請できる/できない」を断定はしません。その代わり、確実な手順をお渡しします。

公募要領を開いたら、本文より先に「対象者(申請要件)」の章を読む。「従業員○名以上」「賃金引上げ計画」といった語があれば、ひとり社長はその枠では戦えません。逆に何も書かれていなければ土俵に乗れます。読み方の詳細は公募要領の読み方にまとめてあります。

当サイトの制度ページでは、この「ひとり社長が申請できるか」の判定をAIが公募要領を読んで先に済ませ、判定の根拠もnoteに明記しています。系統②の制度こそ、判定つきで探す価値があります。


③ 自治体のデジタル化支援:探しにくいが、競争は緩やか

都道府県や市区町村も、小規模事業者向けのデジタル化支援を独自に出しています。国の制度より金額は小さいことが多い一方、地域限定なので応募者が少なく、要件もシンプルな傾向があります。

弱点はただひとつ、存在に気づけないこと。自治体のサイトは縦割りで、検索にもかかりにくい。当サイトは自治体の制度も収集対象を広げているところなので、お住まいの都道府県のページか、この記事の下の「関連する募集中の制度」から拾ってください。


ひとり社長の「AI導入」で補助金と相性がいいのは

最後に、何に使うかの話を。ツール名は流行り廃りが速いのであえて挙げませんが、「自分がやっている繰り返し作業を、ソフトウェアに移す」投資は系統①の王道です。

  • 経理・請求まわりの自動化(補助金の実績報告にも効きます → 会計ソフトの選び方
  • 問い合わせ対応・予約受付の自動化
  • 見積書・提案書などの定型文書の下書き生成

逆に、月額数百〜数千円のツールを1本入れるだけなら、申請の手間のほうが高くつくこともあります。補助金は「まとまった導入・乗り換え」のタイミングで使うのが費用対効果の分かれ目です(→ 全体の考え方は国の制度総まとめ)。


この記事の更新方針

制度名・補助率・締切のような変わる情報は本文に固定せず、一次ソース(公式サイト)と、下の自動更新パネルに任せる設計にしています。本文で断定しているのは、制度の骨格・探し方・要領の読み順といった変わりにくい部分だけです。「いま申請できるか」は、必ずリンク先の一次ソースでご確認ください。