補助金は後払いです。先に自分で払って、実績報告の審査を通ってから入金される。ここまでは知っている人も多いはずです。

ですがその先に、もうひとつ待ち構えているものがあります。入ってきた補助金には、税金がかかります。

100万円の補助金が入って、そのまま100万円使えるつもりでいると、翌年の申告で足りなくなります。この記事は、その「受け取った後」の話だけを扱います。

この記事は制度の一般的な仕組みを国税庁の一次資料から整理したものです。個別の申告をどうすべきかの判断は税理士にご相談ください。 当サイトは税務相談には応じられません。

原則:補助金は収入に入る

まず出発点です。事業に関連して受け取った補助金は、事業所得の総収入金額に算入されます。非課税ではありません。

これは条文よりも、国税局の回答事例を見るのがいちばん早いです。機械装置を買うために県の補助金を受けた個人事業者が「この補助金は一時所得として申告してよいか」と照会したのに対し、名古屋国税局はこう答えています。

本件補助金は、事業の遂行に付随して生じた収入であり、事業所得に該当するものであるため、一時所得に該当しません。

名古屋国税局 平成28年12月19日回答

つまり事業のために受け取った補助金は、素直に事業の収入です。この点は後でもう一度出てきます(そこが落とし穴だからです)。

例外:固定資産を買うための補助金には「先送り」がある

ただし、固定資産を買うための補助金には特例があります。設備を買うためにもらった補助金にその年いきなり課税されると、税金の分だけ設備の購入資金が足りなくなる——それを避けるための調整です。

そしてここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

この特例は、個人事業主と法人で名前も条文も違います。

個人事業主 法人(マイクロ法人を含む)
制度の名前 国庫補助金等の総収入金額不算入 圧縮記帳
根拠 所得税法42条・43条 法人税法42条
やること その年の総収入金額に算入しない 帳簿価額を減額する
一次ソース 国税庁 No.2202 法人税基本通達 第10章第2節

「圧縮記帳」で検索すると法人の話しか出てきません。そのため「個人事業主は圧縮記帳が使えない=何も無い」と誤解されがちですが、そうではありません。名前が違うだけで、個人事業主にも同じ趣旨の制度があります。

やり方は違います。個人の場合は、国税庁 No.2202 のとおり:

固定資産の取得や改良に充てるために国または地方公共団体の補助金や給付金など(中略)の交付を受けた場合で、その交付の目的に適合した固定資産の取得や改良をしたときは、確定申告書に一定の事項を記載することを条件として、国庫補助金等のうち、その固定資産の取得や改良に充てた部分の金額に相当する金額を総収入金額に算入しない

「確定申告書に一定の事項を記載することを条件として」という部分が重要です。具体的には「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を確定申告書に添付します。黙っていても適用されません。

これは免除ではなく「繰延べ」

見落とされがちですが、税金が消えるわけではありません。

この取扱いを受けた固定資産に係る取得費の額については、実際にその固定資産の取得のために要した金額や改良費の額から総収入金額に算入されなかった国庫補助金等の額を控除した残額となります。

取得費が補助金の分だけ小さくなる。取得費が小さくなれば、毎年の減価償却費も小さくなります。つまり今年の収入から外した分は、これから先の経費が減る形で戻ってきます。

経営セーフティ共済と同じ構造です。節税ではなく、課税の繰延べ

この話は、募集中の何件に関わるのか

「固定資産を買うための補助金」と言われても、自分が探している制度が該当するのか分かりにくいはずです。当サイトが判定している募集中の制度で数えました。

募集中・ひとり社長が申請できる272制度のうち、対象経費に固定資産になりうるものを挙げているのは109件(40.1%)でした。

対象経費に含まれるもの 制度数
機械装置・器具備品 61件
建物・施設整備・改修工事 65件
車両・自動車 15件
いずれかを含む(重複除く) 109件

(対象経費の記述への文字列一致で数えたものです。重複があるので内訳の合計は109件になりません。)

裏を返すと、残りの約6割は経費だけを補助する制度です。広告宣伝費、展示会の出展料、専門家への謝金——こうした経費補助には固定資産が絡まないので、この特例の出番はありません。素直に収入に入れて課税されます。

自分が狙っている制度がどちらなのかは、公募要領の対象経費の欄を見れば分かります。当サイトなら機械・設備が対象の制度広告・宣伝が対象の制度を分けて見られます。

落とし穴1:通達を字面で読むと「一時所得」に見える

ここからが、他ではあまり書かれていない話です。

所得税基本通達34-1は一時所得の例示を並べていて、その(9)にこう書かれています。

法第42条第1項《国庫補助金等の総収入金額不算入》又は第43条第1項《条件付国庫補助金等の総収入金額不算入》に規定する国庫補助金等のうちこれらの規定の適用を受けないもの

所得税基本通達 34-1(一時所得の例示)

字面どおり読むと、こう読めてしまいます。「42条の特例を使わなければ一時所得になる。一時所得なら特別控除50万円があって、しかも課税されるのは半分。そちらのほうが有利では?」

冒頭で紹介した名古屋国税局への照会は、まさにこれを聞いたものでした。そして回答は——

標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。

否定です。理由はこう説明されています。

一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得であることが要件となっているところ、本件補助金は、事業の遂行に付随して生じた収入であり、事業所得に該当するものであるため、一時所得に該当しません。

一時所得は「他のどの所得にも当たらないもの」という定義です。事業に付随して受け取った補助金はまず事業所得に当たるので、その時点で一時所得の入口に立てない。通達の(9)を単独で読むと、順番を逆にしてしまうわけです。

これは通達だけ見ていると気づけない種類の間違いです。しかも「有利そうに見える方向」に間違うので、自分では気づきにくい。

国税局の文書回答は「照会に係る事実関係を前提とする限り」の見解であり、申告内容を拘束するものではないと明記されています。事実関係が違えば結論も変わります。

落とし穴2:補助金は後払い。買った年と入金の年がずれたら?

補助金は後払いです。先に設備を買って、翌年に入金されることは普通に起きます。

ところが所得税法42条1項は、文理上は「国庫補助金等の交付を受け、その年においてその交付の目的に適合した固定資産の取得をして…」という形になっています。買った年と交付の年がずれると、条文にストレートには当たりません。

この点を正面から照会した事例があります。東京都の補助金で耐震補強工事をしたところ、工事は平成20年に終わったのに補助金の交付決定は工事完了後の審査を経て翌平成21年になった、というケースです。

東京国税局の回答は次のとおりでした。

標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。

東京国税局 平成22年2月9日回答

照会者が求めた見解は「交付があった年に42条1項の適用を受け、43条2項・施行令91条に準じて取得価額と未償却残高を調整する」というものです。工事をした年は普通に減価償却し、補助金が入った年に取得価額と未償却残高を調整する形になります。

後払いだからといって、この特例が使えなくなるわけではない。 ただし調整の計算が必要で、ここは自力でやる領域ではありません。

落とし穴3:事務局からもらう補助金は「国庫補助金等」なのか

もうひとつ、ひとり社長にとって実務的に大きい論点です。

法人税法42条の対象になる国庫補助金等について、国税庁はこう説明しています。

固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金等で、対象法人に対して直接交付されるものをいいます。

「直接交付」。ところが実際の補助金は、事務局や執行団体を経由して振り込まれるものが大半です。これでは対象外になってしまうのか——という照会に対する国税庁の回答が公開されています。

【回答要旨】いずれも照会者意見のとおり解して差し支えありません。

本件のように間接交付される補助金であっても、補助金交付団体は国に代わって補助金の交付事務を行っているに過ぎず、実質的に国から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当するものと考えられます。

なお、地方公共団体の財源を基にして間接交付される補助金についても、実質的に地方公共団体から直接交付を受けたものと認められる場合においては、国庫補助金等に該当するものと考えられます。

国税庁 質疑応答事例「間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について」

基金から交付される場合も同様に扱ってよい、とされています。

当サイトが扱っている募集中の制度でいうと、国のjGrants掲載分が115件、自治体が145件、東京都中小企業振興公社のような外郭団体経由が12件。公社経由はまさにこの「間接交付」の形です。

ただし「実質的に直接交付を受けたと認められる場合」という条件が付いています。どの制度でも自動的に該当するわけではありません。

消費税はどうなるか

補助金は消費税の課税対象外(不課税)です。特定の政策目的のために交付される給付金は、資産の譲渡等の対価に当たらないためです。

ただし補助金の制度側で、別の扱いを求められることがあります。当サイトのDBで公募要領を見ると、募集中272制度のうち41件が「消費税等仕入控除税額」の報告や返還について明記していました。

補助事業完了後に、消費税及び地方消費税の申告により補助金に係る(仕入控除税額が確定した場合の報告)

補助対象経費に含まれる消費税のうち仕入税額控除できた分は、実質的に自己負担していないので補助金から差し引く、という趣旨です。これは税法ではなく補助金の交付要綱側のルールなので、要領を読んで確認してください。

まとめ

個人事業主 法人(マイクロ法人)
補助金の原則 事業所得の総収入金額に算入 益金に算入
固定資産を買う補助金の特例 国庫補助金等の総収入金額不算入 圧縮記帳
手続き 明細書を確定申告書に添付 所定の経理処理と申告書への記載
効果 免除ではなく繰延べ(取得費が減り、以後の減価償却費が減る) 同左
一時所得にできるか できない(事業に付随=事業所得が先)
後払いで年がずれたら 交付年に調整して適用しうる
事務局経由でも対象か 実質的に直接交付と認められれば対象 同左

補助金は「もらって終わり」ではありません。後払いで立て替えが要る実績報告で証憑を求められる、そして入金した年に課税される。この3つを見込んでおかないと、採択されたのに資金繰りが苦しくなります。

よくある質問

補助金をもらったら、確定申告は必要ですか?

事業として受け取った補助金は事業所得の総収入金額に算入されるため、通常どおり確定申告に含めます。固定資産を買うための補助金で総収入金額不算入の特例を使う場合は、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を確定申告書に添付する必要があります。添付しなければ特例は適用されません。

個人事業主は圧縮記帳を使えないと聞きましたが、不利になりますか?

「圧縮記帳」は法人税法の制度なので、個人事業主は使いません。ただし所得税法42条・43条に「国庫補助金等の総収入金額不算入」という同じ趣旨の制度があります。名前と経理の方法が違うだけで、その年の課税を先送りする効果は同じです。

補助金を一時所得にすれば50万円の特別控除が使えますか?

事業の遂行に付随して受け取った補助金については、名古屋国税局が「一時所得に該当しない」と回答しています。一時所得は事業所得などのいずれにも当たらない所得を指すため、先に事業所得に該当する時点で一時所得にはなりません。

事務局を通して振り込まれる補助金でも特例は使えますか?

国税庁の質疑応答事例では、間接交付であっても交付団体が国に代わって交付事務を行っているに過ぎず、実質的に国(または地方公共団体)から直接交付を受けたと認められる場合には国庫補助金等に該当するとされています。ただし個別の制度ごとの判断になります。

広告費や展示会出展費の補助金にも、この特例はありますか?

ありません。この特例は固定資産の取得または改良に充てた部分が対象です。経費だけを補助する制度は素直に収入として課税されます。当サイトの集計では、募集中でひとり社長が申請できる272制度のうち、固定資産になりうる経費を挙げているのは109件でした。

免責と一次ソース

この記事は制度の一般的な解説です。 実際の申告における取扱いは事実関係によって変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。当サイトは税務相談・申告代行は行いません。